福井大学医学部

腫瘍病理学(病理学1)

研究内容紹介

主要研究テーマ

糖鎖病理学(特に種々の疾患における硫酸化糖鎖の機能解明

血流中のリンパ球は,リンパ節や扁桃といった二次リンパ組織に集まり,そこからリンパ管を介して再び血流中に出て行くという再循環を繰り返しています。この現象をリンパ球ホーミングといいます。リンパ球ホーミングは多段階の分子相互作用によって精密に制御されていますが,その最初のステップは血流中のリンパ球が二次リンパ組織に存在する高内皮細静脈という特殊な血管の内腔面をコロコロと転がり,その速度を落とす反応から始まります。この反応はリンパ球表面に発現している糖鎖結合タンパク質であるLセレクチンと,高内皮細静脈内腔面に発現している硫酸化シアリルルイスX糖鎖との相互作用によって惹起されます。このメカニズムは生理的なリンパ球ホーミングのみならず,種々の慢性炎症性疾患におけるリンパ球浸潤にも関与しています。私たちはこれまでに慢性胃炎潰瘍性大腸炎自己免疫性膵炎慢性前立腺炎好酸球性副鼻腔炎,といった慢性炎症性疾患では高内皮細静脈様の血管が誘導されており,その血管内腔面に発現する硫酸化シアリルルイスX糖鎖がこれらの疾患の病態形成,および活動度に関与していることを報告してきました。また,慢性胃炎をその発生母地とする粘膜関連リンパ組織(MALT)型悪性リンパ腫で誘導される高内皮細静脈様血管には主としてコア2分岐型Oグリカン上に(硫酸化)シアリルスイスX糖鎖が提示されていることを明らかにしました。さらに,セミノーマワルチン腫瘍といった腫瘍のリンパ性間質の形成にも高内皮細静脈様血管が関与していることを明らかにしました。このようにLセレクチンリガンドである硫酸化シアリルルイスX糖鎖は種々の疾患の病態形成に関与しており,この分野におけるさらなる研究が望まれます。

一方で,種々の癌における(硫酸化)糖鎖の発現意義についても研究を行っています。大部分の膀胱癌の腫瘍間質には,硫酸化シアリルルイスX糖鎖を発現した高内皮細静脈様血管が誘導されるとともに,約20%の症例では癌細胞自身も硫酸化シアリルスイスX糖鎖を発現していることを報告しました。また,細胆管細胞癌で形成される腫瘍腺管内腔面に硫酸化シアリルルイスX糖鎖が線状に発現しており,細胆管細胞癌の組織診断マーカーとして有用であることを示しました。

最近,ガラクトースの硫酸化されたユニークな硫酸化糖鎖を認識するモノクローナル抗体の作製に成功し,現在,この抗体を用いて種々の病態における硫酸化糖鎖の発現意義を明らかにすべく研究を行っています。

骨軟部腫瘍病理

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