福井大学医学部

運動・スポーツ医学(保健体育)

研究内容紹介

運動・スポーツ医学領域での研究は、測定評価学的アプローチにより、健康・スポーツ科学に関する身体機能評価方法として、
(1)筋パワー、筋持久力、バランス能力の定量的・客観的評価方法の確立(タケイ機器工業、バイオメディカルサイエンス社、ANIMAとの共同研究)

(2)体組成推定に関わる推定法の検証(水中体重秤量法における残気量の簡易推定、生体インピーダンス法における推定式の確立、内臓脂肪量の簡易推定、各部位の皮下脂肪厚の変動量に関する研究)、トレーニング科学分野として、
(3)中高年女性に対する効果的なスロートレーニングプロトコルの開発(hiroNARIとの共同研究)、

(4)オルニチン塩酸塩摂取の効果の検証(協和醗酵工業との共同研究)、そして、高齢者のQOL向上、とりわけ日常生活自立度に深く関連する転倒予防対策として、(4)高齢者の包括的な転倒リスク評価方法(スクリーニング調査法、転倒関連身体機能評価法)の開発、
(5)高齢者の転倒予防に有効な代償的ステップの検証

(6)易転倒性高齢者の歩容に関する研究について取り組んでいます。

これらの研究活動において、最も重点がおかれている研究は高齢者の転倒予防に関する研究であり、転倒リスク評価や歩行能力改善に関して上原祈念生命科学財団、デサントスポーツ科学振興財団、ユニベール財団、中冨健康科学財団などの民間財団のグラントを取得(研究分担者)しています。また、科研費において、平成18~20年度および、平成21~23年度の若手研究Bとして高齢者の転倒予防に有効な代償的ステップに関する研究(研究代表者)が採択され取り組んでいます。さらに、平成19~21年度の萌芽研究として、高齢者の転倒による骨折予防のためのエアバッグ式ヒッププロテクターの開発や、平成21~25年度の基盤研究Aとして、自立高齢者の包括的な転倒予防システムの構築について研究分担者として取り組んでいます。
高齢者の転倒に関連した身体機能評価に関して、ステップ測定器を開発し、機器の妥当性や信頼性の検証とともに転倒予防効果を検証中です。転倒リスクスクリーニングとして、多様な転倒リスク因子のなかで介入すべき因子を特定するためのスクリーニング調査票を開発し、さらに介入すべき因子を改善するための予防プロトコルを作成しています。これらは5年後を目処に、包括的な転倒予防システムとして確立することを目指しています。
高齢者を対象とした一連の研究を実施するにあたり、地域在住の多くの高齢者、自治体の協力を受けており、これらの対象者への還元として継続的な運動教室や講演活動を行っています。

主要研究テーマ

高齢者の転倒回避に有効な代償的ステップ動作の評価とエクササイズプログラムの開発

高齢者の転倒・骨折は日常生活自立度を著しく低下させ、要介護・寝たきりの直接的な原因となる。転倒予防に関して、医学、スポーツ科学など様々な分野で研究が行われてきた。市町村自治体では転倒リスクに関わる下肢筋力、バランス能力などの身体機能改善を目的とした転倒予防プログラムが提供されている。しかし、筋力、バランス能力が高い高齢者であっても、視聴力の低下、服薬などの影響によりふらついたり、つまづいて転倒してしまうことが多く、転倒防止には別のアプローチも必要と考えられる。
姿勢は足関節、股関節の各方略による調節によって保持されている。転倒の危険性は、大きな外乱によって上記の方略で身体重心位置を支持基底面に留められず、姿勢保持できない状態で高まる。右図に示すように、この場合反射的に代償的ステップをとって支持基底面を拡大し、転倒の回避を図る。「とっさの一歩」である代償的ステップは転倒回避の最終手段となる重要な動作と考えられる。高齢者の代償的ステップに関する研究は、近年になって国外の研究者によって動作特性の検証を中心に行われ始めた。筆者は高齢者の転倒回避に有効な代償的ステップ動作に関連する身体機能を検討し、その評価方法、エクササイズの提案を目指している(文科省科研費若手B H18-20, H21-23)。

運動・スポーツ医学(保健体育)研究室

TEL
0776-61-3111