精神疾患の生物学的基盤を明らかにし、その発症予防や早期介入、診断法の確立および治療のあらたな開発に寄与することを目標に研究を進めています。研究の分野は、動物モデルを用いた基礎的研究から、各精神疾患を対象とした臨床研究までを広く網羅しているのが特徴です。
基礎的研究としては、ラットの新鮮脳切片を用いた脳代謝研究として、向精神薬の脳内グルコース代謝、ミトコンドリア機能に及ぼす影響とその分子メカニズムについての研究、気分安定薬の作用機序解明に関する研究、亜鉛などの微量元素が情動に及ぼす影響に関する研究を行っています。
臨床研究としては、健常者の記憶や情動など高次脳機能の画像化、統合失調症や自閉スペクトラム症(ASD)における認知機能異常の脳機能イメージング、うつ病や老化に伴う脳白質病変、サイトカインや内皮機能、および自律神経機能などの変化を定量的評価に基づき検討しています。さらに、統合失調症やPDDおよび加齢について、脳波やMEGの非線形法(マルチフラクタル、マルチスケールエントロピーなど)を駆使したデータ解析による研究も併せて進めています。
主要研究テーマ
- 児童・青年期の精神医学研究
- 自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如多動症(ADHD)の子どもから大人までの連続性についての検証
- ASD、ADHDの脳画像研究
- ASD、ADHDのバイオマーカーの探究、視線計測研究による早期発見・介入
- ASD、ADHDの認知機能調査(CANTAB等)
- ASDの社会的コミュニケーション能力の検証
- ASDの感覚特徴の探求
- ASD、愛着障害児者への治療的臨床試験(オキシトシン経鼻投与)、オキシトシン濃度(血液、唾液)測定
- 社会感受性の遺伝子研究(オキシトシン受容体)
- ディスレクシア(読字障害)の読み困難の探求
- EMDR(眼球運動による脱感作と再処理法)効果の科学的探究
- ヒト高次脳機能および精神神経疾患の脳機能画像(VBM, fMRI, DTI, MRS)
- 健常人の高次脳機能の画像化(正常発達過程、加齢変化、感情、記憶、注意、認知機能など)
- 精神神経疾患(ASD、ADHD、統合失調症、気分障害、アルツハイマー病)の脳構造研究(MRI:体積VBM、表面積surface area、皮質厚cortical thickness、白質DTI)
- 課題(表情認知、自己認知、相互模倣、共同注視、文章理解、記憶、身体的疼痛、精神的疼痛、共感)を用いた精神神経疾患の脳機能研究(MRI:task-fMRI、resting state fMRI、近赤外線スペクトロスコピーNIRS)
- 精神神経疾患の臨床核医学研究(PET:アミロイドイメージング、各種受容体イメージング)
- 脳波を用いた精神神経疾患における神経ネットワーク解析
- 神経ネットワークに着目した電気けいれん療法の作用機序の解明
- tDCS(経頭蓋直流刺激)を用いた高次脳機能の影響の解明、精神神経疾患への治療的アプローチ
- 精神神経疾患の基礎研究
- うつ病モデルラットにおける中枢神経系の神経可塑性および酸化ストレス定量評価(うつ病の病態メカニズムの解明)
- autoradiography (ARG)法によるマウス脳スライスのイメージング
- 高齢者のメンタルヘルス
- 認知症の早期発見や早期介入におけるバイオマーカーの探究
- 認知症の脳画像研究
- 高齢者メンタルヘルス健診制度
- 生体リズムと臨床睡眠
- 睡眠時無呼吸についての終夜睡眠脳波による検討
- REM睡眠行動障害などの治療に関する研究
- 精神療法研究
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- 症例に即した認知療法の理論と実際
- オープンダイアローグ(開かれた対話)を用いた精神療法の検討