福井大学医学部

分子遺伝学(生化学1)

研究内容紹介

免疫は、感染などの異物の侵入から私たちの体を守るために必要ですが、このシステムの破綻は、自己免疫疾患やアレルギーなど様々な病態を引き起こします。当研究室では、免疫担当細胞の分化・活性化・機能制御の分子機構を明らかにすることを通じて、獲得免疫反応が生体内で適切に機能する仕組みを理解することを目指します。さらにこの研究を発展させ、免疫異常に起因した様々な疾患の治療への貢献も目指しています。

主要研究テーマ

活性化B細胞の分化決定機構の研究

抗体遺伝子は、AIDという酵素によって『クラススイッチ組換え』や『体細胞突然変異導入』と呼ばれる遺伝情報の変換が誘導され、抗体機能が変化します。しかし、活性化B細胞のすべてにAIDに依存した遺伝子変化が誘導される訳ではなく、抗体遺伝子の変換をせずにすぐに形質細胞(抗体分泌細胞)に分化する細胞もいます。また、活性化B細胞の一部は、記憶B細胞となり二次免疫応答に貢献することも知られています。私たちは、活性化B細胞がこれらの細胞系列に分化方向を決定する分子機構を明らかにすることを目指しています。

免疫反応を制御するメカニズムの研究

免疫反応は、非自己である病原体を認識して排除するシステムです。また、損傷組織や癌細胞など、有害となった自分自身の細胞も排除します。免疫系が正しく機能するためには、認識した抗原に適した反応を誘導することはもちろん、免疫反応を、適切な強さで適切な時間持続することが必要です。このシステムが破綻すると、アレルギーや自己免疫疾患、病原体の蔓延など、様々な障害が起こることが知られています。私たちは免疫反応を負に制御するシステムに注目して解析を進めます。様々な免疫反応において、免疫反応を抑制する仕組みをひとつひとつ明らかにしていくことを目指します。

細胞の増殖と分化を関連づけるシグナルの同定と、そのシグナルによる細胞分化制御機構の研究

細胞が分化する際、細胞増殖の変化をともなうことが広く知られています。活性化B細胞では、細胞増殖が盛んな細胞はクラススイッチし、細胞増殖が抑制された細胞は形質細胞に分化します。しかし実際には、細胞増殖の変化が起こる以前に細胞内で起っている『ミトコンドリア機能の変化』と、それに伴って増減する『代謝産物』が、細胞増殖と細胞分化の方向性を決定するシグナルとして機能していることを見いだしました。私たちは、様々な細胞系列において、遺伝子発現やミトコンドリア機能、細胞内代謝産物の変化を調べることによって、細胞の増殖と分化に関わるシグナル分子の同定を試みます。さらに、それぞれの細胞で実際に機能しているシグナル分子による細胞分化決定機構を明らかにすることを目指します。

分子遺伝学(生化学1)研究室

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