福井大学医学部

統合生理学(生理学2)

研究内容紹介

当研究室では、生理学実験(ウェット)と数理モデルによるin silico解析(ドライ)を統合した独創的なアプローチ、「システム生理学」を推し進め、分子・オルガネラ・細胞・臓器・個体レベルの多階層にわたる研究によって、生体機能の統合的解明を目指しています。

主要研究テーマ

1) 細胞内イオンダイナミクスに着目した心臓機能の生理・病態解明を目指す研究

細胞内イオンダイナミクスは、固有心筋である心房筋・心室筋細胞の興奮・収縮連関を担う重要なファクターです。また、特殊心筋であるペースメーカー細胞(洞房結節細胞)の自動能発生にも重要な役割を果たします。

a) 細胞生理学実験

単離心房筋・心室筋・ペースメーカー細胞や、拍動培養心筋細胞HL-1を用いて、蛍光タンパクの遺伝子導入や蛍光色素の負荷による細胞内小器官・細胞質イオンダイナミクスのイメージング実験と電気生理学実験を並行して行っています。また、細胞内イオンダイナミクスを担う個々の分子について、遺伝子導入、ノックダウン等を行い、これらの分子の寄与を解析しています。

b) 数理モデルを用いたシステム生理学研究

上記の実験で得られた結果をもとに個々の要素(チャネルやトランスポータ、酵素など)を数理モデル化し、統合することによって、包括的心筋細胞モデル(心室筋細胞、洞房結節細胞、HL-1細胞モデル)を構築してきました。“数理モデル解析による作業仮説の提示と実験的検証”の反復によって、心臓を構成する様々な細胞の生理機能発現における個々の要素の寄与を定量的に明らかにするとともに、これらの要素の機能異常によって惹き起こされる細胞機能の破綻メカニズムを解析しています。

2) リンパ球イオンダイナミクスのメカニズム・病態解明を目指す研究

リンパ球は、抗原受容体への抗原結合などの種々の刺激により細胞内Caが増加します。Caをはじめとした種々のイオンダイナミクスのメカニズムの解明、イオンダイナミクスと免疫異常との関連について研究しています。リンパ球細胞の数理モデル化にも成功し、これまで知られていなかったミトコンドリアCaトランスポータがBリンパ球細胞の免疫応答に大きな役割をはたすことを発見しました。

3) イオンチャネル蛋白質の1分子ダイナミクスを計測し機能制御機構の動的解明を目指す研究

イオンチャネル蛋白質は細胞内外の境界にある脂質二重膜を貫いて存在し、内外のイオンの通り道となっている蛋白質です。分子種によって異なるイオンを選択し、通り道の開閉は様々な因子で制御されています。開閉を制御している因子がどのように分子の動きに影響を与え、イオン透過路が開閉するのかを、エックス線を用いて1分子で実時間記録する研究を行っています。これまでに、カリウムイオンを選択するカリウムイオンチャネルが開閉する際に大きくねじれる様子を捉えることに成功しています。

統合生理学(生理学2)研究室

TEL
0776-61-3111