福井大学医学部

災害看護学

研究内容紹介

災害看護学領域では災害が社会の変化や地域の人々の暮らしと密接に関係しながら、人々の生命や生活に影響を及ぼすことに焦点を当てている。地震・水害・噴火・雪害などの自然災害に関連したこころと身体の健康問題に関する研究を研究領域としています。
研究テーマは①地震・水害・噴火の自然災害に関連したこころと身体の健康問題に関する研究、②慢性疾患を持つ被災者の健康管理に関する研究です。また、文部科学省研究助成金により、「災害初期から復興期における地域力重視の他職種連携による心理支援体制の構築」(基盤研究C)、「慢性疾患を持つ被災者の健康管理 ―老年期と中年期の被災者に焦点を当てて―」(若手研究B)にも取り組んでいます。

業績年の進捗状況

災害看護では、看護基礎教育指定規則の改正、および保健師助産師看護師国家試験に対応し、災害看護教育の必要性が高まっているため、災害看護の書籍の出版や雑誌への掲載を行った。また、国内・国外の災害支援活動に参画し、災害看護教育の動向を調査・分析し、実践活動に反映させた。

特色等

災害看護では、医療従事者や地域住民を対象とした講演活動を通して、緊急時・災害時のケアや精神的支援について教育活動を行っている。

主要研究テーマ

ジャワ中部地震発生後の被災看護職者の中長期的心理的変化

本研究の目的は、ジャワ中部地震発生後のジャクジャカルタにおける被災看護師の中長期的心理的変化を明らかにすることである。対象は30保健センターに勤務する20代~50代の被災看護師59名(男性14名、女性45名)であり、震災セミナーの受講者であった。援助者は、活動前に自分自身の知識を確認し、活動中や活動後も援助者同士で心身の安定に努めていた。また、被災者と対峙する前に、他職種からも情報収集するが、自分で直接確認することを重要視していた。援助の実際では、聞くことや話すことだけでなく、身体的援助を行いながら、タイミングや自然な流れで関わることに心がけていた。また、時間や役割を調整し環境を整え、被災者が語れる雰囲気を作り、継続して関われる体制を整えるために、情報を共通し連携することに心掛けていた。本研究で明らかになったこころのケアの現状から、(1)援助者への活動支援体制および教育方法の検討(2)被災地における援助者間の連携および調整など協力体制(3)危機的状況に対する判断と介入に関する課題が明らかになった。

アジア圏の看護大学における災害看護教育の現状

本研究の目的は、教育背景の異なるアジア圏の看護大学における災害看護教育の導入状況、災害看護教育に関する実態を明らかにすることである。調査対象は10カ国に設立されている205の看護大学及び看護学部の災害看護担当教員とし、質問紙調査に協力が得られた51校の教員の回答を分析の対象とした。2009年災害看護教育の現状として①授業の有無については51名中44名は有、1名が特別講義で対応、3名が計画中と回答②授業形態は半数近くが演習を伴っている③必修と選択はほぼ同じ割合であり、時間数は11~15時間が最も多い④科目名は7名が「災害看護」、他「救急・急性看護」「成人看護」に類する科目が23名と多く、災害直後のクリティカルケアへの関心が高かった。

ハイチ大地震における被災民の健康状態と現地医療従事者との協働―NPO法人が実施した医療救護活動

2010年4月初旬、ハイチ大地震の被災地である首都ポルトープランスの西方約30キロのマリアニに向かった。私達医療チームメンバー8名は、倒壊した学校の敷地内にある被災民テント村で、現地の医師1名と看護師ら3名、テント村リーダーと共に診療活動を行った。事前にリーダーから、テント村には601世帯、2703人が居住、年齢構成は不確定、1世帯1テント、2畳ほどのスペースに3~10名の家族が居住しているとの情報を得た。154名の診療活動を通して把握した健康問題は、消化器感染症、婦人科感染症、皮膚疾患、風邪症状、マラリアの疑い、高血圧、ストレス症状等であった。これ等の病気の発生は、被災者が居住するテント内の狭さ、トイレ、水の供給、ゴミ捨て場などの衛生環境、配給される食糧事情と密接に関連していることが考えられた。また現地医療職との協働の視点から、今後、私達NPO災害看護支援機構が取り組む国際救援活動上の課題が見出された。

災害看護学研究室

TEL
0776-61-3111