福井大学医学部

皮膚科学

研究内容紹介

長谷川教授は、これまでに全身性強皮症などの膠原病、アトピー性皮膚炎、褥瘡、悪性黒色腫などの皮膚疾患の病態に関して、患者さんの血液などの検体や多種類の遺伝子欠損マウスを用いて、免疫学的な機序を検討してきました(“教授研究業績”のページ参照)。すでに、当教室でもそれらをさらに発展させる研究を開始しています。また、長谷川教授以外にも、英国に留学経験があり多大な研究業績を有する尾山准教授や基礎医学の教室で十分な経験を積んできた知野助教などが揃っており、研究指導の体制が整っています。強皮症などの膠原病に加えて、アトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、乾せん、水疱症、褥瘡、悪性黒色腫、遺伝性皮膚疾患など、さまざまな皮膚疾患の病態解明と治療開発のための研究を行っていきます。大学院に入られる場合は、臨床をやりながらでも、教室内で研究成果をあげられるようなテーマを選び、研究経験の豊富な指導医が責任を持って指導いたしますので、安心ください(これまで長谷川教授が直接指導した大学院生は、インパクトファクター5前後の英語論文をまとめて学位を取得しています。中には小さな子供を3人育てながら、金沢大学の最優秀論文賞を受賞した先生もいます)。また、福井大学には優れた基礎の教室も多いため、学内の基礎の教室との連携も積極的に進めていきたいと考えています。学位を取得後にさらに研究を発展させたいというやる気のある方には、海外留学のチャンスも考慮します。

国内外から集まった大学院生は現在6名です。以下に現在進行中の研究内容を紹介します。

1. 表皮に発現するあるデルモカインの役割に関する研究

我々は、以前の検討結果から、表皮に発現する分子のひとつである角化関連分子デルモカインが、皮膚のバリア機能や炎症の抑制に作用していると考えております。その役割を明らかにするために、デルモカインのアイソフォーム3つをすべて欠損した遺伝子欠損マウスを世界で初めて作成して解析しました。その成果を最近皮膚の国際研究雑誌に報告しました。このマウスの表現型や様々な皮膚疾患の病態における役割をさらに解析しており、大変興味深い知見が得られてきています。乾癬、アトピー性皮膚炎をはじめとする様々な疾患にこの角化関連分子が関与している可能性があり、精力的に検討を進めています。

2. 強皮症の新規治療の探索

全身性強皮症の治療法はいまだ確立されていません。我々は以前に線維化に関与しうるマクロファージの遊走に関与するフラクタルカインというケモカインが強皮症患者さんの病変中や血中で増加していることを報告しました。そこで、強皮症のマウスモデルにおいてフラクタルカインに対する中和抗体を投与したところ皮膚の炎症、線維化、血管障害が抑制され、国際リウマチ雑誌に報告しました。現在、別の強皮症モデルでも抗体治療の有用性を検討しています。また、他にもTGF-βシグナルを抑制する低分子化合物や抗線維化作用を呈する既存薬が強皮症マウスモデルに効果を示し、同様に解析を進めています。これらの研究が、難病である強皮症の病態解明と克服につながることを目指しています。

3. 皮膚遺伝性疾患の原因遺伝子の探索

ヒトの全遺伝病の約1/3が、皮膚に何らかの症状をもつことが分かっていますが、いまだに見つかった遺伝子異常から皮膚に生じる症状の全てを予測したり、治療に反映させることが困難です。そのような疾患の中でも、皮膚の色素や角化の異常に関わる遺伝病に注目して研究を進めています。原因遺伝子の異常を解析することだけに留まらず、標的となるタンパク質の未だ知られていない機能の同定を試みています。将来的には、異常のある遺伝子やタンパク質のみ、さらには異常のある部位のみを認識できるような分子標的治療への発展を目指して取り組んでいます。

4. 皮膚腫瘍におけるウィルスの関与に関する検討

ヒト乳頭腫ウイルスやポリオーマウイルスなど、皮膚の良性・悪性腫瘍の発症や転移に関わると考えられるウイルス感染の有無を、遺伝子やタンパク質レベルで解析する検査を行っています。今後はウイルスの種類や対象とする皮膚疾患をさらに拡大していく予定です。

今後はメラノーマなどの皮膚腫瘍、創傷治癒、血管炎などの研究も発展させていく予定です。

主要研究テーマ

膠原病

皮膚免疫学

皮膚腫瘍

皮膚病理学

分子生物学

皮膚科学研究室

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