福井大学医学部

腎臓病態内科学(臨床検査医学)

ニュース & トピックス

透析室が移転し新しくなりました。

  1.  この度、病院再整備事業の一環として血液浄化療法部が2015年9月より旧病棟一階エレベーターホールを入り口としてリニューアルオープンしました。新透析室の設計においては旧透析室の問題点を洗い出し、一つ一つを改善できるようにしました。まず、これまで2階にあった透析室を1階にし、出口を2か所設けることで災害時に避難しやすいものとしています。さらにこれまで当院の透析ベッド数が少なく、満床で他院透析施設の急変患者を断らざるを得ない事態が発生していましたが、新規透析室では9→15床へ増床し、入院患者用ベッドの割り当て比率を増やすことでより地域貢献度の高い透析室を目指しています。従来の透析室は手狭でベッドやストレッチャーでの入院患者搬送が困難でしたが、今回は5倍の総床面積に各床ベッド2台が入る幅を確保してゆとり持たせ対応しています。個室では透析装置の動作正常/異常を示すパイロットランプを個室の外にも設けて遠隔からも確認できるようにし、15台中の6台を最新のオンラインHDF対応としました。HDFとは、血液透析にろ過を加えた治療法で、従来の血液透析では取り除きにくい低中分子蛋白尿毒素を取り除き、血圧安定化、心臓負担の軽減、透析アミロイドーシスの予防、貧血改善などの効果が報告されています。さらに抜針事故予防のため透析回路にはチューブ長に余裕を持たせた柔らかい素材の特別仕様を採用し、全床漏血センサーを設け透析コンソールと連動させて、漏血を感知すると自動的に血液ポンプが止まるシステムを採用することで安全面に配慮し、巨大地震で複数の患者様に同時に抜針が起こった場合にも出血事故が最小限に食い止められるようにしました。
  2.  外来患者様に対しては患者様の視点から設計を練りました。入口側の通路に手摺を設置し、待合ラウンジはクローズに整備し、2畳分の畳の小上がりを設けて気分不良の際などには気兼ねなく横にもなれ、全体としてくつろげるスペースとしました。照明は間接照明を取り入れて調光できるようにし、処置の時は明るい光でスポット照明とし、治療中は優しい光でリラックスできるようにしました。空調も患者様に直接風が当たらないように工夫した配置としました。ベッド間には隣の患者様が気にならないよう仕切りを設け、機械室は音漏れがしないように奥に設け遮音性を考慮した造りにしました。4時間にも及ぶ長時間の透析治療を快適に過ごせるよう全床どのベッドからも時計が見える配置としています。ロッカーはこれまで外来患者様が男性9名、女性6名に対し、男性ロッカー8個、女性ロッカー8個で対応していますが、新透析室では将来性を考慮して男性12名分、女性12名分のロッカーを設置しました。さらにプライバシー保護の観点から診察室を別に設け、なんでも相談できるスペースとしています。この診察室を利用して保存期腎不全の患者教育にも力を入れ透析導入を未然に防ぐための試みも行っていく予定です。
  3.  今回の透析室設計では本格的なスタッフカウンターを無くしたことが大きな特徴となっています。医療スタッフがカウンターに集まるのではなく、ベッドサイドに足を運んでWiFiノートパソコンを活用して患者間を移動する業務スタイルになるようにしました。これにより医療スタッフが患者様とより近い距離で診療に当たることが出来、壁を無くし1つの大きな部屋にしてオープンなスペ-スとすることで見通しが良くなることが期待されます。一方、廃棄物庫と汚物処理室は完全区分けし、手洗いは水はねを考慮した深いものとしました。透析機械室は災害時や人為ミスで塩素ガスが発生したり、湿度により粉末透析用薬剤が変性固着したりする可能性があるため独立した常時吸排気空調システムを整備し災害に強い透析室にしました。配管類も耐熱性のある素材を用いて熱水消毒が可能なシステム構築をしています。
  4.  これまで医師・看護師・ME技士が東京まで出向いて透析室専門の建築設計会社のセミナーやコンサルトを受け、他大学や他施設の見学に行き、診療業務の後、遅くまで残り、休日を返上して新透析室の草案を練ってきました。これらの工夫により医療安全の向上と感染対策の両立を図り、災害に強い透析室を目指しました。新透析室では患者様の側に立って最高・最新の医療を安心・信頼の下で提供できるものと考えています。